Vol37:野寺山高薗寺 鬼追式

雪が舞う境内に、法螺貝と太鼓の音が鳴り響く。
夕暮れ時、燃え盛るたいまつの炎を高々と掲げ、赤鬼と青鬼が姿を現した。
力強く、そして厳かに舞い踊りながら、五穀豊穣、家内安全を祈願する。

たいまつの揺らめく炎はやがて群衆へと投げ込まれる。火の粉が舞う中、人々は我先にと手を伸ばす。鬼が投げたたいまつは、玄関先に飾ると魔除けや無病息災のご利益があると伝えられている。

約280年前から脈々と受け継がれてきた伝統行事。その営みを支えるのは野寺地区の有志で結成された保存会の存在だ。村の人たちが一丸となり、受け継いできた。
「たいまつの材料の竹を切るところからですわ。夜な夜な手作業で160本を作ります。」
そう話すのは、保存会会長の藤原睦さん。
準備は毎年1月から始まる。

赤鬼と青鬼は、村の若者から選ばれる。
今年、その大役を担ったのは、島田佳岳さんと早川京佑さん。
「子どもの頃から憧れていました。
単純な動きなんですが、所作が美しいです。見てるのと実際やってみるのは違いましたね。」
言葉の奥に、緊張と誇りがにじむ。

近年は若者の減少もあり、継承への課題もあるという。住職、浅田覚道さんは語る。
「町の民俗文化財に指定されています。町内でもまだ広くは知られていない鬼追式です。多くの方に知っていただきたいですね。」

地域に根づく祈りの行事を、次の世代へ。
静かにその灯を守り続けている。

野寺山高薗寺鬼追式
稲美町野寺851
2月初旬の土日に開催

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